◆日本庭園◆
狭い空間の中に自然の雄大さや移り変わりを表す日本庭園。お寺や旅館や美術館などを訪れた際に見かけることがあると思います。

日本の庭が始まったのは七世紀ごろで神事の儀室を執り行う場所でした。後世では人々の美的感覚を表現したり社会的な役割を持つようになりました。
庭と聞けば色とりどりのお花をイメージする人が多いのではないでしょうか?確かにイングリッシュガーデンやフランス式庭園では様々なお花が華やかに咲き乱れていますね。しかし伝統的な日本庭園ではお花は主役ではありません。あるのは池、岩、木、砂利といった控えめなものです。これらの要素を使って海、山、川など大きな自然の風景をコンパクトに表しているのが日本庭園なのです。
伝統的な日本庭園には主に三つのスタイルがあります。
★池泉庭園

比較的広い敷地に池や川を作り木などの植物を配した庭園で、ゆっくり眺めながら歩いて楽しむタイプと、書院からじっくり眺めたりして楽しむタイプのお庭があります。1000年以上前、天皇が宮殿にこうした庭を築き詩を詠んだり池に舟を浮かべて宴を催したのがこのスタイルの始まりです。後に貴族がこの庭園を真似して自宅に作りました。江戸時代には将軍が各国の大名に対して江戸で住居を作って暮らすように命じました。大名たちが作った庭園の池は大火事が起きた時の防火の役割も兼ねていたのです。
★露地

露地は茶室の庭です。茶室には必ず付属しているお庭で客人は露地を通ってから茶室に入ります。露地を歩くと森林の中に作られた隠居所を訪れているような感覚が訪れひととき世俗を忘れます。こうして客人が茶事に入る前のプロローグ的な準備空間として、日常から非日常への入り口という存在が露地なのです。
★枯山水
もともとは禅寺に作られた庭園です。比較的大掛かりな池泉庭園と違って水を使わないので狭い面積で作ることができます。砂に描かれた模様は海や川の流れを表していますが、砂と岩で表すのは自然だけにとどまらず思想であったり伝説であることもあります。シンプルさがかえって人々の想像力を掻き立てるのです。または心を無にして瞑想に取り組む場所ともなります。
身近に日本庭園を楽しむにはどうすればいいのでしょうか。坪庭というスペースを作って小さな日本庭園を自宅に作ったり、マンションの狭いベラン日本庭園を造る人もいます。それも無理な人には箱庭はいかがでしょうか?箱庭は浅い箱に砂を入れ石や橋などのミニチュアを配置して自分で作る枯山水の模型です。箱庭作りはセラピーにも使われていますよ。